
両側眼瞼痙攣の鍼灸治療
- shirouchi

- 11月24日
- 読了時間: 3分
更新日:7 日前
50代女性
初診 9月22日
1年前頃より、右目の下眼瞼に痙攣が起こり、特に朝起床時に起こりやすい。
痙攣も継続して治らず3ヶ月前より日々強くなるのを感じ、インターネットをみて当院の治療を希望して来院された。
西洋医学的に、片側顔面痙攣の場合は、脳血管に問題がある事が多いが、基本的に両側に出ることは殆どない。それと比べて眼瞼痙攣の場合は、自律神経の乱れやストレスと言われることが多いが、中医学的に症状から治療をしてみる。
◎中医学的診察
望診 舌尖紅苔少
聞診 声小さく力なし
問診
1年前より右下眼瞼痙攣が起こり、初めはお酒を飲むとぴくぴく痙攣して、そのうち朝もぴくぴく痙攣するようになった。今年に入り痙攣の頻度が増えて、人と会話時に痙攣が止まらず困っている。
初めは飲酒のせいかと思い、お酒を控えたが痙攣が治らず、右目に留まらず、左眼瞼の上の方も痙攣する様になってしまった。
仕事はデスクワーク、首肩腰痛みあり。
睡眠は24時頃就寝するが、眠り浅く目覚めやすい。3時頃目が覚めて夜間尿1回、朝まで眠れない事もある。
普段はよく鼻水が出て鼻も詰まりやすい。風邪を引きやすく寒がりで冷え性で特に手足末端が冷える。尿は多尿、便秘症で便硬。漢方薬を飲んで便は出ている。
食欲あり、間食もする。食事をするとゲップあり、けぷけぷしてしまう。
体重が3ヶ月前より3kg増えてしまった。
切診 沈実脈尺部感じず
◎弁証
胃気上逆 肝腎不足
◎治法
和胃降逆 滋補肝腎
症状から見ると、風邪ひきやすく冷えもあり、気虚症状も見受けられる。また夜間尿もあり陽気や腎気不足もあるだろう。しかし、主訴の痙攣や脈からも実症状が目立ち、虚と実が混在している虚実挟雑証であると考えられる。
痙攣は中医学では内風と捉えると、肝血虚からの血虚生風も考えられる。
目は肝血が滋養しており、目の症状は肝が関係している事が多い。また首肩こりも肝血虚から筋の滋養不足もある。便秘で硬便は腸熱であり血虚から陰液不足による影響が考えられる。
中焦に熱を持ち末端に滋養できない為手足は冷えてしまう。
肝陰血が不足すると、睡眠にも影響し不眠も引き起こす。また肝臓は胃の気をスムーズに下に降ろし消化機能を支えている為、肝胃不和にて胃気上逆となると、ゲップなど起こす。
ここで胃の経絡を考えてみる。足陽明胃経絡は目の下から始まり足の第2足趾外側に終わる。そのため胃の経絡は、顔面に多く巡行しており痙攣の場所からしても胃と関係している事がわかる。様々な症状あるが、ポイントを肝と胃に絞り、胃気を降ろしげっぷを解消する事で、胃の経絡疏通をはかり、同時に肝腎補い治療する。
◎治療穴
百会、承泣、翳風、合谷、上脘、中脘、天枢、関元、足三里、三陰交、太衝、大椎、肝兪、脾兪、胃兪、腎兪など
週2回治療で6回目頃より痙攣が無くなった。
週1回治療になり少し治療期間を開けると、痙攣が反対側の上眼瞼に出て来たため、また治療頻度を週2回に変更して以降、痙攣が止まった。同時に胃のげっぷ症状や食後のけぷけぷ感も無くなった。現在は週1回治療で様子をみているが、痙攣は出ていない。
胃気がスムーズに下に降りる事で、目の痙攣も良くなっている。西洋医学ではなかなか考えられないと思うが、中医学ならではの身体のみかたによって、鍼灸治療する事で症状は良くなっている。



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