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右変形性膝関節症(OA)の鍼灸治療

  • 執筆者の写真: shirouchi
    shirouchi
  • 10月19日
  • 読了時間: 4分

70代女性


1ヶ月前より右膝の痛みが強くなり歩行や階段の登り降りも大変になってしまった。整形外科を受診すると変形性膝関節症と診断され、消炎鎮痛薬や湿布等も出されたが、多少の疼痛緩和でしかなかった。インターネットで鍼灸治療が膝関節症に有効と知り当院を希望して来院される。


まず、変形性膝関節症(OA)は、50歳以上の女性や、肥満傾向の方に多いとされている。

特徴としては、殆どの場合、関節の変形、腫脹、疼痛、可動域制限がみられる。

X線画像では、関節裂隙の狭小化や骨棘形成、軟骨下骨骨硬化像など認められたりする。


膝関節は膝蓋骨と大腿骨、脛骨、腓骨によって構成されているが、軟骨下骨がすり減り摩耗して、変形腫脹しO脚を呈する事が多い。


◎中医学的診断

病状自体は器質的疾患で、鍼灸治療においても、局所治療をメインとした治療となるが、先ずは診察してみる。

中医学的には、様々な弁証方法があるが、

今回は運動器疾患のため、西洋医学的解剖学と経絡弁証を用いて治療を行う。


中医学において、50歳を過ぎて年齢と共に徐々に腎精が少なくなってくる為、骨や精髄が弱くなり腰や膝に痛みが生じてくる。

特に女性の場合、毎月の生理があり男性と比べ腎精血を消耗するため、骨が弱くなりやすい。


腎精は腎陰であり、腎気は腎陽であるが、

腎という臓は、陰陽の根本と言われており、

全身の体温コントロールや自律神経にも関わってくる。腎気が衰えると、尿の開閉する力が弱くなり、尿漏れや夜間尿も増えてくる。また下半身の冷えなども生じたりする。

逆に腎陰が消耗すると、身体を潤し冷やす事ができなくなり、身体の火照りやのぼせ、寝汗や口が乾いたりする内熱症状や便秘や乾燥症状なども出てくる。また精血は、各臓腑や筋肉を栄養しているため行き渡らないと、筋肉が攣ったり、筋肉が痩せたりする。この様に、腎という臓は重要な役割りを担っている。

腎は年齢と共に衰え腎虚になると、いわゆる歳のせいと言われる様々な症状がでてくる。


◯望診 

体格は痩せ方。足がしっかり上がらず歩行が不安定で、痛みのため患側下肢に体重が乗っていない。膝は内側腫脹とややO脚を呈している。


◯切診

患部の圧痛部位は、右膝内側の関節裂隙にあり、歩き始めが特に痛みがある。

患部の熱感は少し感じる。他膝蓋骨の上部と内側部も痛みがある。

関節可動域をみると、足は真っ直ぐには伸びず、160度から170度くらいで痛みが出る。

下肢ハムストリング、内転筋、大腿四頭筋も硬く柔軟性を感じない。


◯治療

変形性膝関節症の鍼灸治療において、膝の変形は基質的なため、そのものの改善は難しいが、殆どの場合、膝を支えている大腿四頭筋や下肢内転筋の働きが悪く、筋肉や硬結していたり筋膜が癒着していたり、筋肉脆弱化している場合がある。各々症状が違うため直接触って確認すると、膝の内側の関節裂隙に痛みがある。


足少陰腎経は、経絡循経でいけば足裏の湧泉に始まり足内側の内果の周りを回って上向し、膝の内側から上向し股関節内側を上がり腹部中心のすぐ傍を上向し腹部、胸部を通り鎖骨辺りに終わる。


膝の内側部の陰谷という腎経の経穴を使い、大腿四頭筋が膝を補強しているため、膝上の鶴丁という経穴も使用する。

他、膝の運動は、曲げ伸ばしによる膝蓋骨のスムーズな動きによりできているため、膝下の犢鼻、内膝眼という経穴も使っていく。

他、下腿は前脛骨筋である足三里、後脛骨筋である三陰交を使い、解剖学運動学的、経絡的にツボを選択して治療する。


この患者様は、初回の治療で痛みと歩行が大分楽になった。もともと曲げづらかった膝も可動域も拡がり、現在はサポーターを使用しながら歩行や階段の上り下りもできている。


初めは週2回治療から始めて現在は週一回通院されている。治療回数を重ねることに膝の痛みも軽減して、仕事にも行けている。


中医学による鍼治療は、様々な角度から身体をみることにより、治療が可能である。

膝の痛みで困っている方がいたらぜひ鍼治療を受けてみてほしい。


 
 
 

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