
眼瞼痙攣の鍼灸治療
- shirouchi
- 6月20日
- 読了時間: 4分
更新日:6月20日
70代女性
眼瞼痙攣を発症して十数年になる。両目共に症状があるが、特に右目の下瞼がピクピクと痙攣が起こり、目の痛みもあり眩しく辛い。
ボトックスをしていないと眼瞼が鉄板の様に重く下垂して見えづらいため、クランチ眼鏡を使用している。
この度、インターネットで当院ホームページを見つけて、眼瞼痙攣治療のためご来院くださった。
同じ痙攣でも片側顔面痙攣の場合、殆どは脳血管と顔面神経の接触によって痙攣が起こるとされており、手術にて改善する方もいらっしゃるが、眼瞼痙攣の場合、両側に起こる事が多く、脳中枢神経、また自律神経などの問題でないかとされているが原因は、はっきりとした事は分かっていない。
健常者でも、寝不足だったり緊張やストレスで不随的に目がピクピクとする事がある。
不随的な痙攣や痙縮が起こるジストニアも対人会話や緊張、ストレスなどで症状が悪化する事が多いが、この眼瞼痙攣は、そうとも限らないため難しい。
◎中医学的診察
既往歴/喘息 白内障 緑内障 脊柱管狭窄症
脈診/脈弦数尺部沈
舌診/舌燥辺紅黄膩苔
問診
上記症状にて眼瞼痙攣、上眼瞼の重い事に悩まされている。
今年の1月に精神的大きなダメージを受け、以降精神的な落ち込みや不安症状もある。
睡眠5時間 浅眠 夜間尿1回〜2回
上半身は熱く感じ冷えはなし。鼻水がよく出る。腰痛、手の母指外側面のぴりぴりした違和感がある。食欲旺盛、便硬1回/日
弁証
肝風内動 湿熱
配穴
百会 風府 風池 大椎 身中 筋縮 命門 心兪 肝兪 脾兪 腎兪
攅竹 太陽 陽白 下関 上廉泉 合谷 内関
中脘 天枢 関元 太衝 足三里 三陰交など
年齢により腎気も弱くなってきており、脈は尺部が沈んでいる。また眠りも浅く不安もあるため心のツボもとる。
もともとの脊柱管狭窄症や胸腰椎左への側湾変移があり腰痛があるため局所のツボも取るが、肝の治療と共に腎を補う。
また、舌苔が厚く黄色のため湿熱があり、
脾胃を損傷しているため痰湿により運化も悪く
胃熱も少しある。
顔面部は、足陽明胃経が多く分布しており、
表裏関係である脾経は、眼の上眼瞼と繋がっている。そのため、胃経の足三里の瀉法と脾経の三陰交をとり、脾胃を整え、肝気を降ろし気機の巡りを良くするため、合谷と太衝を合わせた四関穴をとる。
肝の治療をメインとして脾胃の調節を行い、
現在、週3回治療を継続して行い様子をみている。
初診より2回治療した段階で、効果を感じており目の重みが楽になってきた。既に今はクランチ眼鏡も必要なくなったと喜んでいらっしゃる。
◎内風について
中医学において、この様な痙攣は内風が関係しているとされているが、内風を起こす原因は、肝風内動、肝陽化風、熱極生風、血虚生風などあり、肝の蔵が関係する事が多い。
肝は蔵血(血を貯蔵)、疏泄(気機の調節)作用により、血を各臓腑や筋に送り栄養して、気の巡りを調節して精神活動を調節している。
一度、ストレスにより肝気が鬱結すると気が滞り、この状態が続くと肝気は肝火と化して、上部に熱症状を持ち、更に内風を生じると痙攣や震えなど起こる。
また肝血が血虚となり筋を滋養できず内風を起こすと震えや痙攣を起こしたりもする。
肝血は、昼間は活動的に身体の五臓六腑を栄養し、夜には肝蔵に戻り身体を休め静かに回復する。ところが不眠や過労、ストレスは、肝血を消耗する。特に女性の場合は、毎月月経にて血を消耗するので相対的に男性よりも血が足りない。閉経後も腎の衰えと共に精血が不足するため、肝血も相対的に減ってくる。この様な事で肝血虚により、筋肉や臓腑を滋養できずに血虚生風を起こすこともある。
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当院では中医学に基づいた鍼灸治療を行い
西洋医学とは少し違う視点から診察して、
全身治療を行います。勿論西洋医学の観点も含めて考えます。
そのため難しい病気も、その方の症状や体質、お身体の状態で取るツボも違います。
何か症状で気になる事があれば、是非ご相談ください。
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