男性 90歳
2年前秋頃より、急に右足に力が入らず、足が上がらない。救急医療センターで検査するが異常はない。その後近医院で頭部から腰部下肢まで詳しく検査したが異常なく、年齢によるものと腰が原因でないかということで、足関節装具を造り、リハビリにも通ったが右足は変化しなかった。
症状に対して諦めてかけていたが、たまたま昨年末に当院の情報を雑誌で見て、東洋医学なら治るかもしれないと希望を持ってご来院いただいた。
右下垂足の症状以外に、痛いところは特にない。90歳で痛いところがないのは素晴らしい!
しかも88歳までテニスをやっていたというから驚きである。
既往歴は、腰部脊柱管狭窄症でオペをして金属のボルトが入っているとのことだが腰痛もない。
足関節の麻痺症状は、腰部も疑うが大腿神経・坐骨神経共に運動感覚は、徒手検査にて問題ない様子。おそらく何らかの原因で、坐骨神経の枝である腓骨神経麻痺となっているのではないかと考えた。
総腓骨神経は腓骨頭の後ろから前に深腓骨神経、下に浅腓骨神経と別れてそれぞれに神経支配が別れる。
前脛骨筋は深腓骨神経領域で、足関節の背屈や内反に働くが立位では地面を押して抗重力筋として働く。
深腓骨神経麻痺になると下垂足となり、地面を押し返す力なく足の母趾にも力が入らないため、つまずいたり足の巻き込みを起こしやすい。そのために装具が必要である。
西洋医学的に状態を捉えて、筋肉と神経にアプローチして鍼とパルスを使い鍼灸治療を行う。それと同時にお身体の状態を確認して、中医学的に身体の治療も同時に行うこととした。
中医学診察
冷えや火照りなど身体の寒熱の異常を確認。
本人は特に無いと仰っているが、患側の足を触ると若干の浮腫みと冷えがあり、特に足陽明胃経と足の内側(陰経)が冷たい。
年齢からも腎気の衰えはあり夜間尿を確認すると2時間おきにトイレに行くらしい。
足の左右差を見てみる。そうすると、やはり患側下腿が冷えている。浮腫みもあり麻痺症状による気血の巡りが悪いのが分かる。
患側下腿部は、足陽明胃経と表裏関係の足太陰脾経にアプローチ。
この経絡を治療するだけで、気血を補い温陽をかけて浮腫みも改善できる。
同時にご高齢のため、腎の衰えがあり腎気や腎精を補うため、足少陰腎経も使う。
週2回ペースで、3回目治療の時に、浮腫みも改善してきて、冷えも取れてきた。
ご本人からも、「先生足の感覚が変わってきた」と仰っているが、まだ右足関節は動かない。毎回、治療後に神経促通運動を行い終了していた。
そして4回目治療前の問診の際に、
「先生!足が動いたよ!」と右足関節を動かして見せてくださり喜んでいる。
私も本当だね〜!と一緒に喜んだ。
本当、回復の速さに驚きました。90歳というご高齢であるが、年齢ではないなと改めて思う。
ご本人が、こうなりたい。こうありたい。と思う気持ちはとても前向きで、その様な気持ちのベクトルと鍼灸治療が相乗効果として回復を早めたのかと思いました。
本当治療家冥利に尽きるとはこの事ですね。
一緒に喜べて有難いです。



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